Sakura Racing
01 . Our Birth
 僕はずっとF1が好きでした。
僕がまだ幼い頃、父は僕によく、かつてF1世界選手権で世界一に輝いたマクラーレン・ホンダのアイルトン・セナの話をよく聞かせてくれていました。

 2019年オーストリアグランプリ、私は人生で初めて父とF1の生中継を見ました。そこには、かつて父が語っていたホンダのロゴを背負い、レッドブルリンクを駆け抜けるダークブルーのマシンの姿がありました。そして迎えたグランプリ決勝。ホンダが13年ぶりにグランプリで優勝を果たしたその瞬間を、私はこの目で見届けました。

 そのとき、私は胸が強く打たれました。「これほど多くの想いを一つのプロダクトに乗せた、これほどまでに熱いスポーツが世界にはあったのか」と、深い感動を覚えたのです。



 それから数年が経ち、私は高校生になりました。
私の通う高校には「理数探究」という授業があり、その中で私は、中学生の頃から関心を持っていた「教育」について探究したいと考えていました。そんな中で出会ったのが、STEM教育、そしてSTEM Racing™︎でした。

 F1が主催するSTEM教育の競技大会が存在することを初めて知ったとき、私の中でかつて抱いていた「F1への強い憧れ」が再び呼び起こされたように感じました。そして、「このプロジェクトを達成するための舞台は、このSTEM Racing™︎しかないのだ」と心から強く思いました。

 ここで、一つの疑問が浮かぶかもしれません。「そもそも、なぜ教育について探究したいと考えていたのか」という点です。
私は小学校を卒業し、地元の中学校に進学する際に、優秀な友人たちが地元を離れ、都市部の学校へと進学していく現実を目の当たりにしました。
この現状に対して、私は深いショックを受けました。そして同時に、「本当に遠くの学校でなければできない何かがあるのだろうか」と疑問に思ったのです。
「この地に留まりながらでは、授業を受けているだけでは、見えてこないものや、辿り着けない場所には届かないのだろうか。いや、違う。自分たちで行動を起こせば、それがたとえ“世界”という大きな壁であっても、そこに辿り着くことができるのではないか」と考えるようになりました。
この大会の目的は、単に速いマシンをつくることではありません。設計、マーケティング、資金調達、プレゼンテーション、さらには地域や企業との連携までもが求められる、極めて実践的な競技です。

 「地方の高校生が世界を目指す姿を通じて、教育を変える」

 それこそが、私が目指したい未来であり、この挑戦の本質だと考えています。
最初はもちろん、一人からのスタートでした。
「誰かを巻き込むには、自分の想いを言葉にして届けるしかない」と考え、一つ下の学年が今後の行事についての説明会に飛び入りで参加しました。そこで私は、1年生たちに自分の熱意をぶつけ、構想を語り、ビジョンを共有しました。その結果、「一緒にやりたい」と言ってくれる仲間が一人、また一人と増えていき、現在では6人の仲間たちとともに、「花 -SAKURA- Racing」を結成するに至りました。



 「まだ何も完成していない。」

 それでも、ゼロから何かを創り上げようとするこの時間には、確かな価値があります。 この挑戦は、私一人のためのものではありません。地域の方々と、企業の皆さまと、そして教育の未来と——多くの存在を巻き込んでこそ意味があるのだと考えています。
この取り組みは、私たちの"すべて"を、将来この山口県、さらには日本の未来を担っていく世代へと還元していくためのものです。

 すべては、「変えたい」と願う想いから始まりました。

花-SAKURA-Racing プロジェクトマネージャー 野村 恭平
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